
2026年8月16日|ライト兄弟ニュース
「青年会議所」と聞いて、あなたはどんな人たちを思い浮かべるだろう。
地域の経営者が集まる団体。
スーツ姿の若手経営者たち。
街のお祭りやイベントを手伝っている人たち。
名前は聞いたことがあるけれど、実際に何をしているのかはよく知らない――。
そんな日本人も少なくないはずだろう。
しかし、その実像を知っていくと、見え方は大きく変わる。
北海道から沖縄まで。
農業、製造業、建設業、IT、サービス業など、さまざまな仕事を持つ青年たちが、本業とは別の時間を使いながら、自分たちが暮らす地域と日本の未来について考え、行動している。
その全国組織が、公益社団法人日本青年会議所(JCI Japan/日本JC)である。
日本JCによれば、2025年12月現在、全国には665の青年会議所(LOM)があり、約3万人が所属している。
しかも、その約9割が企業の取締役または管理職など、組織の中核を担う人たちだ。
第一次産業から第三次産業まで、業種も幅広い。
つまり日本青年会議所とは、単なる「若者の交流会」ではない。
地域で会社を経営する人。
家業を継いだ人。
従業員の生活を背負っている人。
地域経済を支えている人。
そして、自分自身もまだ成長の途中にいる人。
そんな青年たちが集まり、
「自分たちの地域を、少しでも良くしたい」
「次の世代に、どんな日本を残すのか」
という問いに向き合っている場所でもある。
そして2026年、1,779社が一つの記録をつくった
2026年8月、日本青年会議所は、日本記録認定協会から、
「DE&Iに取り組んでいる企業が最も多く所属している団体」
として認定された。
その数は、
1,779社。
2026年7月時点で、日本全国の青年会議所に所属する会員企業のうち、1,779社がDE&Iの推進に取り組んでいることが確認されたという。
DE&Iとは、
Diversity(多様性)
Equity(公平性)
Inclusion(包摂性)
の頭文字だ。
難しい言葉に聞こえるかもしれない。
しかし、本質はもっと人間的なものだ。
女性だから。
男性だから。
外国人だから。
障がいがあるから。
子育てをしているから。
介護をしているから。
年齢が違うから。
価値観が違うから。
生き方が違うから。
そうした「違い」によって、その人の可能性まで閉ざされる社会にしない。
違う人間同士が、それぞれの個性を失うことなく、同じ社会の中で力を発揮できるようにする。
それがDE&Iの根底にある考え方だ。
なぜ青年会議所が「多様性」に取り組むのか
ここに、今回のニュースの本当の意味がある。
日本JCは、2026年度に「包摂社会確立委員会」を設置した。
委員長を務めるのは、一般社団法人東広島青年会議所から出向する黒川琴絵氏。
同委員会が掲げる方向性は明確だ。
多様な立場にある人々が自分らしく挑戦し、活躍できる環境を整え、誰もが将来に希望を持てる社会をつくる。
そのために、ダイバーシティスコアの活用だけでなく、ワークショップ、オンラインセミナー、企業見学などを全国で展開している。
つまり、
「多様性は大切です」
と言って終わっているわけではない。
全国に存在する青年会議所のネットワークを使い、その先にある企業を変えようとしている。
企業が変われば、そこで働く人が変わる。
働く人が変われば、家庭が変わる。
家庭が変われば、地域が変わる。
そして地域が変われば、日本が変わる。
1,779という数字の価値は、そこにあるのではないだろうか。
青年会議所には「40歳」というタイムリミットがある
青年会議所には、非常に特徴的なルールがある。
原則として、現役会員として活動できるのは20歳から40歳まで。
40歳を超えれば卒業する。
さらに各青年会議所の理事長などの役職も、基本的に任期は1年。
同じポジションに居続けるのではなく、次の人へバトンを渡していく。
だからこそ、JCには独特の時間感覚がある。
「いつかやろう」
ではない。
自分たちに与えられた時間は有限だから、今やる。
失敗するかもしれない。
批判されるかもしれない。
本業もある。
家族もいる。
それでも、自分の任期の中で何かを残し、次の世代へ渡していく。
その繰り返しで、青年会議所という運動は続いてきた。
第75代会頭・加藤大将氏。その原点には「父親の背中」があった
2026年度、日本青年会議所を率いる第75代会頭は、公益社団法人半田青年会議所所属の加藤大将氏。
その会頭所信を読むと、一人の青年がなぜここまで青年会議所に情熱を注ぐようになったのか、その原点が見えてくる。
加藤氏が中学3年生だった2002年。
家族で北海道・旭川を訪れた。
そこでは、日本青年会議所の全国大会が開催されていた。
当時、加藤氏の父親は日本青年会議所の副会頭を務め、その年に40歳で青年会議所を卒業する立場だった。
父親は卒業式の壇上に立った。
そしてJC活動のため、運動会や授業参観など、家族との時間を十分に取れなかったことへの思いを家族に語ったという。
少年だった加藤氏は、それまで、休日にもスーツを着て出かけていく父親を見ていた。
寂しさもあった。
しかし、大きな会場で父親の言葉を聞き、涙を流す大人たちを目の当たりにした。
そこで初めて、
「父は、何のために家を出ていたのか」
その一端を知ったのだろう。
加藤氏は2026年度の会頭所信で、そのときの経験が、いつか自分も青年会議所に入り「父親のような人になりたい」と思う原点だったのかもしれない、と振り返っている。
そして24年後。
あの日、客席から父親を見ていた少年が、
日本青年会議所の第75代会頭として、全国約3万人のJAYCEEの先頭に立っている。
青年会議所という組織の面白さは、こういうところにある。
人が、人の「やる気のスイッチ」を押す
加藤会頭が2026年度に繰り返し語っている言葉がある。
「やる気の連鎖」だ。
2002年、加藤氏の父親の卒業スピーチを聞いて心を動かされた一人のJCメンバーがいた。
その人物は、自分もいつか卒業年度にあの舞台に立ちたいと考え、JC活動を続けた。
そして実際に、日本JC副会頭を務め、全国大会で卒業生スピーチをするという目標を実現した。
さらに、その人の姿を見て心を動かされた次の人が現れた。
人が人に影響を与え、
その人がまた別の誰かを動かしていく。
加藤会頭は、青年会議所とは、そうして人から人へ熱い想いが受け継がれてきた組織だと述べている。
2026年4月に行われた会頭公式訪問でも、掲げられたテーマは、
「やる気の連鎖が未来を創る ~人が人を輝かせる青年会議所~」
だった。
今回の1,779社というDE&Iの記録も、そう考えると違って見えてくる。
1,779社が、ある日突然変わったのではない。
誰かが始めた。
その姿を誰かが見た。
「うちの会社でもできるかもしれない」
と思った。
そして、また別の会社へ伝わった。
社会は、制度だけでは変わらない。
人が人を動かすことで、変わっていく。
「人間の個性は、この世の至宝」
そして今回のDE&Iというテーマを考えるうえで、非常に象徴的な言葉がある。
加藤会頭がJC運動に取り組むうえで大切にしている、JCI Creedの一節だ。
「人間の個性はこの世の至宝であり」
この言葉は、今回突然生まれたDE&Iのキャッチコピーではない。
青年会議所という運動が長年受け継いできた価値観の中にある。
人間は、一人ひとり違う。
違うからこそ価値がある。
その個性を社会の力に変えていく。
そして加藤会頭は「人類への奉仕」を、単に困っている人を直接助けることだけではなく、社会の仕組みや課題そのものに向き合い、より良い社会を実現していくことだと説明している。
だから、日本青年会議所がDE&Iに取り組むことは、決して流行に乗った活動ではないのかもしれない。
むしろ、
「人間の個性には価値がある」
という青年会議所が持ち続けてきた思想を、2026年の日本社会で具体化したものと見ることができる。
写真に写っているのは、「日本を変える」という大きな言葉を背負った普通の人たちだ
日本青年会議所の役員写真を見る。
全員がスーツを着て並んでいる。
一見すると、どこかの企業の集合写真のようにも見える。
しかし、一人ひとりには所属する地域がある。
半田。
東京。
仙台。
八千代。
神戸。
宇都宮。
京都。
青梅。
名古屋。
浜松。
大阪。
伊達。
つくし。
高松。
埼玉。
千歳。
酒田。
下妻。
鈴鹿。
福井。
出雲。
阿南。
小林。
沖縄――。
2026年度役員には、日本各地の青年会議所から集まったメンバーが名を連ねている。
東京だけで日本の未来を考えているのではない。
地方だけでもない。
それぞれが自分の地域で仕事をし、生活をし、家族や仲間を持ちながら、全国という舞台に出てきている。
だからこそ、彼らが話し合う「日本の未来」は、机上だけの話ではない。
多様性とは、日本らしさを捨てることではない
ライト兄弟ニュースは、日本から世界へニュースを届ける多言語メディアとして、このニュースを世界に伝えたい。
ただし、日本のDE&Iを、そのまま海外の価値観に合わせて説明するつもりはない。
中国には、中国の美しい多様性がある。
アメリカには、アメリカの力強い多様性がある。
インドには、インドの多様性がある。
インドネシアにも、フランスにも、ドイツにも、イタリア、スペイン、ブラジル、アルゼンチンそしてロシア。それぞれの歴史、宗教、民族、文化、家族観、社会背景がある。
そして、
日本には、日本の多様性がある。
多様性とは、世界中を同じ色に塗ることではない。
むしろ逆だ。
違う色を、違う色のまま大切にすることだ。
青を赤に変える必要はない。
赤を黄色にする必要もない。
違う色が存在しているからこそ、世界は美しい。
そして、日本という国にも、守るべき文化があり、歴史があり、地域があり、美しさがある。
それを大切にしながら、新しい人、新しい価値観、新しい生き方を受け入れていく。
その難しい挑戦こそ、これからの日本に求められる「包摂」なのではないだろうか。
1,779はゴールではない
もちろん、認定を受けたからといって、日本社会のDE&Iが完成したわけではない。
1,779社すべての職場で、誰もが幸せに働いていると断言できるわけでもない。
むしろ、本当の挑戦はここからだ。
制度をつくった後に、人の意識は変わるのか。
女性が経営の意思決定に参加できるのか。
育児をする男性が肩身の狭い思いをしない会社になるのか。
障がいのある人が「配慮される人」だけではなく、一人の戦力として活躍できるのか。
外国人がいつまでも「外国人スタッフ」と呼ばれるのではなく、同じ会社をつくる仲間になれるのか。
年上の人と若者が、お互いを否定せず話せるのか。
価値観が違う人とも、一緒に地域をつくれるのか。
その答えは、記録認定証には書かれていない。
それぞれの会社の、明日の朝から始まる。
愛する日本の未来のために
2026年度の会頭所信の最後に、加藤大将会頭は、JAYCEEたちへ呼びかけている。
社会に変化をもたらし、希望を注ぎ、幸せな未来をともにつくろう、と。
壮大な言葉だ。
しかし青年会議所という組織は、そんな壮大な言葉を、本気で口にする青年たちが集まる場所なのかもしれない。
会社がある。
仕事がある。
家族がいる。
それでも夜になればスーツを着て集まり、
地域の未来を話す。
日本の未来を話す。
世界の平和まで話す。
少し暑苦しいくらいでいい。
社会を変えようとする人間には、それくらいの熱があっていい。
2002年。
旭川の会場で、一人の父親が壇上に立った。
その背中を、一人の少年が見ていた。
2026年。
その少年は、日本青年会議所の会頭になった。
そして今度は、彼の背中を全国の若者たちが見ている。
その中の誰かが、10年後、20年後の日本を変える人になるかもしれない。
人から人へ。
地域から地域へ。
そして、日本から世界へ。
1,779社という数字の向こう側にあるもの。
それは、制度でも、記録でもない。
「この国を、次の世代にもっと良い形で渡したい」
そう願い、行動する人たちの連鎖なのだと思う。
ライト兄弟ニュースは、その挑戦を世界へ伝えていきたい。
違うから、美しい。
違うから、学び合える。
違うから、一人ではつくれなかった未来を、一緒につくることができる。
多様性とは、日本らしさを失うことではない。
一人ひとりの個性を大切にしながら、私たちが愛する日本を、もっと美しい国へ育てていくことなのだ。
【注釈】日本青年会議所を動かす人々
■ 第75代会頭 加藤 大将氏
所属:公益社団法人半田青年会議所
2026年度日本青年会議所会頭。前年には専務理事を務めた。父親も日本JC副会頭経験者で、中学3年生だった2002年、父親のJC卒業式を見た経験が自身の原点の一つとなった。2026年度は「幸せな社会」の創造を掲げ、経済的豊かさだけでなく、心の豊かさ、人とのつながり、地域、日本への希望を重視している。
■ 直前会頭 外口 真大氏
所属:公益社団法人東京青年会議所
2025年度会頭を務め、2026年度は直前会頭として組織を支える。日本最大都市・東京の青年会議所を背景に持つ人物が、次年度のリーダーへ経験をつなぐという、JCの「一年ごとにバトンを渡す」組織文化を象徴する存在でもある。
■ 副会頭
2026年度は、菅原啓太氏(仙台青年会議所)、佐野友亮氏(八千代青年会議所)、森谷圭氏(神戸青年会議所)、佐藤弘大氏(宇都宮青年会議所)が副会頭を務める。
東北、関東、関西など、異なる地域から人材が集まり、日本JCの全国運動を支えている。
■ 専務理事 伊住 公一朗氏
所属:公益社団法人京都青年会議所
2026年度専務理事。会頭・副会頭らとともに日本JCの運営を担う。歴史と伝統の街・京都の青年会議所から全国組織の中枢へ参加している。
■ 顧問
2026年度は、大久保貴惟氏(青梅青年会議所)、安井琢磨氏(名古屋青年会議所)、内山瑛氏(浜松青年会議所)が顧問として名を連ねる。
このほか、監事、地区担当常任理事、会務担当常任理事など、日本各地から多数のメンバーが組織運営に参加している。
■ 包摂社会確立委員会 委員長 黒川 琴絵氏
所属:一般社団法人東広島青年会議所
今回のDE&Iのニュースを語るうえで忘れてはならない人物の一人。2026年度の包摂社会確立委員会を率い、「多様な立場にある人々が自分らしく挑戦し活躍できる環境」を目指し、全国のJCメンバーと企業にD&Iを広げている。
■ 日本青年会議所とは?
日本全国665の青年会議所、約3万人の会員からなる全国組織(2025年12月現在)。会員は20歳から40歳までを原則とし、約9割が企業の取締役・管理職など組織の中核を担う。国際青年会議所(JCI)のネットワークを通じて世界ともつながっている。
エリートでありエネルギッシュでパワフルな組織。
調べれば調べるほど趣き深く素晴らしい組織だと感じた。
当サイトも2000回投稿まで残り僅か、
早く更新をして欲しいと、多言語の強い言葉で背中を蹴られているが、
青年会議所ならば、多様性を呑みこみながら進み続ける姿を理解ってくれるだろう。
Posted by Ozasa

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