2026年8月16日|ライト兄弟ニュース

日本人、中国人、韓国人。
それぞれ違う国で育った3人が、
初対面でチームを組む。
使う言葉は英語。
寝食をともにするのは、約1週間。
そして、その短い時間の中で、
一つのビジネスプランをつくり、
他のチームと本気で勝負する。
それが、
International Business Contest――IBCだ。
2026年8月19日から25日まで、
この国際ビジネスコンテストが3年ぶりに日本で開催される。
主催するのは、
学生団体OVAL JAPAN。
東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学など、さまざまな大学の学生が運営に関わる学生団体だ。
彼らが掲げる言葉は、
Our Vision for Asian Leadership
東アジア発のグローバルリーダーの輩出。
2003年の発足以来、
20年以上。
OVAL JAPANは、
日中韓の学生が、
国籍ではなく「人」として向き合える舞台をつくり続けてきた。
これは「仲良くなるための国際交流」ではない
国際交流と聞くと、
少し穏やかなイメージを持つかもしれない。
文化交流。
友達づくり。
語学交流。
もちろんIBCにも、
文化理解の時間はある。
でも、
それだけではない。
IBCには、
明確に勝ち負けがある。
ビジネスプランを競う。
審査される。
順位がつく。
優勝を目指す。
だから、
参加者は遠慮していられない。
「そのアイデアでは売れない」
「ターゲットが曖昧だ」
「その数字は根拠が弱い」
「その事業モデルでは成立しない」
初対面の相手に、
しかも母国語ではない英語で、
自分の意見を本気でぶつける。
そこに、
IBCの本当の価値がある。
日中韓の学生が、3人1組になる
IBCに参加するのは、
日本、中国、韓国の選考を通過した学生たち。
中国では北京大学や清華大学。
韓国ではソウル大学。
日本からも各大学の学生が集まる。
そして、
チームは、
日本人1人、中国人1人、韓国人1人。
この3人で一つのビジネスプランをつくる。
自分と似た友人を選ぶことはできない。
考え方が違うかもしれない。
言葉の使い方も違う。
常識も違う。
沈黙の意味さえ違うかもしれない。
でも、
チームは同じだ。
一番難しいのは、英語ではないのかもしれない
使用言語は英語。
もちろん簡単ではない。
でも、
本当に難しいのは、
英単語ではないのかもしれない。
「自分の考えが、当然ではない」
と気づくこと。
日本では普通のことが、
中国では普通ではない。
中国では当たり前の判断が、
韓国では違って見える。
韓国で自然なコミュニケーションが、
日本人には強く感じられることもある。
そして、
逆もある。
IBCでは、
そうした違いを、
机上で学ぶのではなく、
実際にぶつかりながら知っていく。
日本人にとって一番怖いのは、「正解のない場」に入ることかもしれない
日本の教育では、
正解のある問題を解くことに慣れている学生も多い。
試験。
偏差値。
点数。
模範解答。
でも、
ビジネスには、
必ずしも正解はない。
誰も答えを知らない。
しかもIBCでは、
その答えのない問題を、
文化も国籍も違う人と一緒に考えなければならない。
ここで必要なのは、
知識だけではない。
相手の話を聞く力。
自分の考えを言葉にする力。
間違いを認める力。
意見を変える力。
そして、
意見が違っても関係を壊さない力。
それこそが、
本当の意味でのリーダーシップではないだろうか。
「英語が話せる人」ではなく、「違う人と働ける人」
日本では、
グローバル人材という言葉をよく聞く。
英語力。
海外経験。
TOEIC。
留学。
もちろん大切だ。
でも、
本当のグローバル人材とは、
単に英語がうまい人なのだろうか。
英語が流暢でも、
自分と違う価値観を受け入れられなければ、
国際的なチームでは働けない。
逆に、
英語が完璧でなくても、
相手を理解しようとし、
自分の意見も伝え、
違いを調整できる人は、
世界で働ける。
IBCが育てようとしているのは、
たぶん後者だ。
政治ではなく、まず一緒に何かをつくる
日本、中国、韓国。
この3カ国には、
歴史がある。
政治がある。
国家同士の立場もある。
感情もある。
ニュースを見れば、
対立が目に入ることもある。
でもIBCは、
そこから少し離れる。
議論の中心を、
あえてビジネスに置く。
誰が正しい国なのか。
どの歴史観が正しいのか。
そこから始めない。
まず、
「このサービスは本当に売れるのか」
「この課題は誰のものか」
「どうやったら事業になるのか」
という共通の問いに向き合う。
この設計は、
非常に賢いと思う。
なぜなら、
共通の課題があると、
人は相手を「国籍」ではなく、
「一緒に解かなければならない仲間」として見るようになるからだ。
国と国ではなく、人と人として出会う
「中国」
「韓国」
「日本」
この言葉は大きすぎる。
国という単位で見ると、
人間が見えなくなることがある。
でも、
同じ部屋で1週間過ごせば、
話は変わる。
中国人のチームメイトには、
好きな音楽がある。
韓国人のチームメイトにも、
苦手なことがある。
日本人のチームメイトにも、
変なこだわりがある。
誰かは寝坊する。
誰かは発表前に緊張する。
誰かは深夜2時に突然いいアイデアを出す。
誰かは疲れて機嫌が悪くなる。
そうして、
「中国人」
「韓国人」
「日本人」
という大きな言葉の向こう側に、
一人の人間が見えてくる。
国際理解とは、
案外こういうところから始まるのかもしれない。
違いを消すのではなく、違ったまま一緒に働く
本当の国際交流とは、
全員が同じ考えになることではない。
日本人が中国人のようになる必要はない。
中国人が韓国人になる必要もない。
韓国人が日本人になる必要もない。
大切なのは、
「意見は違う。でも、なぜそう考えるのかは分かる」
というところまで行くことだ。
それは、
非常に高度な能力だ。
そして、
これからの東アジアに必要な能力でもある。
Culture Studyがある理由
IBCには、
日本、中国、韓国の文化を理解するためのCulture Studyの時間も設けられている。
なぜ文化理解が必要なのか。
それは、
ビジネスの衝突の中に、
文化の違いが混ざるからだ。
発言の強さ。
沈黙。
否定の仕方。
先輩後輩の感覚。
リーダーへの向き合い方。
個人とチームの関係。
「遠慮」
「率直さ」
「スピード」
同じ行動でも、
文化が違えば、
意味が変わる。
国際的なリーダーに必要なのは、
自分の常識を、
世界の常識だと思い込まないことだ。
「多様性」は、集合写真では完成しない
昨日、
ライト兄弟ニュースは、
多様性について記事を書いた。
多様性は、
人種や国籍の違う人たちが並んで写真を撮れば完成するものではない。
本当の試験は、
その後に始まる。
意見が違う。
腹が立つ。
相手に否定される。
自分の案が採用されない。
疲れている。
時間がない。
そんなとき、
同じテーブルに残れるか。
相手の言葉を聞けるか。
自分の意見を言えるか。
そして、
関係を壊さずに、
次の案をつくれるか。
そこまで行って、
初めて多様性は、
「協働」に変わる。
OVAL JAPANを運営しているのも学生
ここも重要だ。
OVAL JAPANは、
大企業が学生向けに提供している研修ではない。
運営するのは、
学生自身。
東京大学。
早稲田大学。
慶應義塾大学。
上智大学。
そして、
さまざまな大学の学生たち。
参加者を募集する。
中国・韓国と連携する。
会場を用意する。
ルールを決める。
プログラムをつくる。
企業や審査員と交渉する。
資金を集める。
広報する。
トラブルに対応する。
そして、
約1年半の任期が終われば、
次の学生へ引き継ぐ。
つまり、
OVALの運営そのものが、
学生にとって巨大なリーダーシップ研修になっている。
2003年から続く実験
OVAL JAPANが生まれたのは、
2003年12月。
翌2004年には、
OVAL CHINA、
OVAL KOREAが発足。
2005年、
東京で第一回IBCが開かれた。
それから20年以上。
東京。
北京。
ソウル。
上海。
東アジアの都市を舞台に、
学生たちはバトンをつないできた。
驚くのは、
2026年の参加者の中には、
OVALが生まれた2003年には、
まだ生まれていなかった世代もいることだ。
それでも理念は続いている。
コロナ禍は、「顔を合わせる意味」を問い直した
新型コロナウイルスは、
OVALの根本を揺らした。
なぜなら、
この活動の価値は、
人と人が同じ場所に集まることにあるからだ。
オンラインでも会議はできる。
プレゼンもできる。
ビジネスプランも作れる。
でも、
画面を閉じれば、
その場から離れられる。
対面では、
そうはいかない。
意見がぶつかった相手と、
その後も同じ場所で過ごす。
食事をする。
翌朝また顔を合わせる。
そうして、
人間関係は続いていく。
2023年、
IBCは東京で完全対面開催を復活。
2024年は韓国。
2025年は上海。
そして2026年、
再び東京へ戻ってくる。
「画面越しではない」ということ
コロナ禍を経験した世代にとって、
オンラインは当たり前になった。
でも、
対面でしか起きないこともある。
相手が言葉に詰まった瞬間。
ため息。
沈黙。
目線。
表情。
怒っているのか、
悩んでいるのか、
もう少し待ってほしいのか。
そういうものは、
画面越しでは簡単に消えてしまう。
「人と分かり合う」という作業は、
情報交換だけではない。
同じ時間と空間を共有することでもある。
IBCは、
そこをあえて残している。
日本の学生にとって、これはかなり厳しい環境だ
日本人は、
対立を避ける傾向がある。
相手の空気を読む。
少し遠慮する。
直接的な否定を避ける。
それが、
日本社会では美徳になる場面も多い。
でも、
国際チームでは、
言わなければ伝わらない。
「私は違うと思う」
「それでは勝てない」
「もう一度やり直したい」
これを英語で言う。
しかも、
相手に嫌われないようにではなく、
チームを勝たせるために言う。
この経験は、
日本の大学生活では、
意外と得にくい。
中国と韓国の学生から学べることも大きい
日本人が中国や韓国について知っていることは、
ニュースから得た情報が多い。
でも、
実際にトップ大学の学生たちと一緒に働けば、
印象はもっと複雑になる。
考えるスピード。
プレゼン力。
競争意識。
議論の強さ。
行動力。
もちろん個人差はある。
でも、
日本の学生が、
「自分はどこが強くて、どこが弱いのか」
を知るには、
同世代の海外学生と本気で競う経験が非常に有効だ。
英語力より、自分の意見があるか
国際交流というと、
「英語が苦手だから無理」
と思う学生も多い。
でも、
実は英語力以上に重要なのは、
自分の意見があるかどうかだ。
何を考えているのか。
なぜそう考えるのか。
何を変えたいのか。
自分は何を提案するのか。
英語が多少つたなくても、
意見がある人は伝えられる。
逆に、
英語が流暢でも、
中身がなければ、
議論には参加できない。
IBCは、
語学力の試験ではない。
「自分は何を考えている人間なのか」
が試される場でもある。
失敗してもいい。むしろ学生時代に失敗したほうがいい
ビジネスプランが負ける。
プレゼンがうまくいかない。
英語が出てこない。
チームで喧嘩する。
判断を間違える。
全部、
学生のうちに経験できる。
社会人になれば、
失敗のコストはもっと大きくなる。
会社のお金。
顧客。
部下。
株主。
家族。
だからこそ、
若いうちに、
本気で挑戦し、
本気で失敗する場所には価値がある。
失敗しない学生が強いのではない。
失敗したあと、
もう一度話し合える学生が強い。
OVALから、実際に次のリーダーが生まれている
OVALの運営や参加経験者からは、
その後、
起業やビジネスの世界で活躍する人材も出ている。
ラクスル創業者の松本恭攝氏や、
クラウドワークスで経営に携わった成田修造氏など、
学生時代にOVALに関わった人材が、
後に社会の前線で活躍している。
もちろん、
IBCに参加すれば、
誰もが有名な起業家になるわけではない。
むしろ大切なのは、
そこではない。
20歳前後で、
「違う国の人間と一つの成果を出す」
という経験を持つこと。
その経験は、
その後どんな仕事に進んでも、
残る可能性がある。
TIBC――まず日本国内でも戦う
OVAL JAPANは、
IBC以外の挑戦の場もつくっている。
2024年度から始まった、
TIBC――Tokyo International Business Contest。
主に関東圏の大学生を対象に、
英語のみを使って、
2日間でビジネスプランの作成とプレゼンに挑む。
スタートアップやベンチャーキャピタルなど、
実務家が審査に関わることもある。
日本人同士であっても、
英語で議論し、
限られた時間で事業をつくる。
その経験が、
国際舞台への入口になる。
SEP――運営する学生も戦う
毎年開催される、
SEP――Staff Exchange Program。
これは、
日本、中国、韓国のOVALスタッフが一堂に集まるプログラムだ。
IBCのルールづくり。
次年度の準備。
文化交流。
そして、
スタッフ自身が参加するビジネスコンテスト。
運営する側だからといって、
安全地帯にいるわけではない。
彼ら自身も、
議論し、
競い、
失敗し、
学ぶ。
2026年はソウルで開催。
2027年は中国での開催が予定されている。
20年以上続いたからこそ、次の問題が出てくる
OVALは、
一つの課題に直面している。
IBCの濃密な1週間を、
経験できる人数には限りがある。
参加者。
スタッフ。
合わせても、
約100人程度。
では、
この体験を、
どうやってもっと多くの学生へ届けるのか。
動画で伝える。
SNSで伝える。
記事で伝える。
でも、
見ることと、
実際にその場で喧嘩することは、
まったく違う。
規模を大きくすれば、
体験の濃度が薄くなるかもしれない。
小さく保てば、
届く人数は少ない。
これは、
OVALが次の20年に向けて考えなければならないテーマだ。
それでも、この100人には意味がある
「100人しかいない」
と見ることもできる。
でも、
見方を変えれば、
一人が10人に影響を与えれば、
1,000人になる。
一人が100人の会社を率いるようになれば、
影響はもっと広がる。
将来、
参加者の誰かが、
企業をつくるかもしれない。
大企業の役員になるかもしれない。
研究者になるかもしれない。
行政で働くかもしれない。
教育者になるかもしれない。
そのとき、
20歳の夏に、
中国人と韓国人と一緒に、
夜中まで事業計画をつくった経験が、
何かの判断に影響するかもしれない。
日本の若者に必要なのは、「世界へ出る勇気」だけではない
海外へ行こう。
英語を学ぼう。
世界で活躍しよう。
よく聞く言葉だ。
でも、
本当に必要なのは、
海外へ出る勇気だけではない。
違う人と一緒に働く勇気だ。
意見を言う勇気。
否定される勇気。
間違いを認める勇気。
謝る勇気。
考えを変える勇気。
そして、
対立した相手を、
翌朝また仲間として見る勇気。
それができる人は、
たぶん世界のどこへ行っても働ける。
8月19日、東京に小さな東アジアが生まれる
IBC2026は、
日本、中国、韓国の国家関係を変えるイベントではない。
そんな大げさな期待をする必要もない。
数十人の学生が集まり、
1週間を過ごすだけだ。
でも、
その1週間の中では、
小さな東アジアが生まれる。
一緒に食べる。
喧嘩する。
考える。
作る。
負ける。
勝つ。
笑う。
疲れる。
相手の名前を覚える。
そして、
国籍より先に、
その人の顔を思い出せるようになる。
これは、
小さい。
でも、
とても大切な変化だと思う。
国際理解は、「仲良くしましょう」だけでは生まれない
本当に相手を知るには、
ときには、
本気でぶつかる必要がある。
自分の意見を隠さず、
相手にも本音を求め、
それでも最後まで同じテーブルに残る。
それができたとき、
相手は、
「中国人」でも、
「韓国人」でもなくなる。
一緒に戦った、
一人の仲間になる。
国際的なリーダーシップは、
首脳会談から始まるとは限らない。
もしかしたら、
もっと小さな場所から始まる。
東京の一室。
ホワイトボード。
ノートPC。
眠そうな3人の大学生。
そして、
朝までに完成させなければならない、
一つのビジネスプラン。
そんなところから、
次の東アジアが始まってもいい。

編集部注
OVAL JAPANとは?
学生団体OVAL JAPANは、日本・中国・韓国の大学生を、ビジネスコンテストや国際交流プログラムを通してつなぐ学生団体。
OVALは、
Our Vision for Asian Leadership
の頭文字。
東アジアから次世代のグローバルリーダーを育てることを掲げている。
いつ始まった?
OVAL JAPANは2003年に発足。
翌2004年にはOVAL CHINA、OVAL KOREAが誕生し、
2005年に東京で第1回IBCが開催された。
IBCとは?
International Business Contestの略。
日本、中国、韓国の学生が多国籍チームをつくり、
英語を使ってビジネスプランを作成する国際ビジネスコンテスト。
ビジネスレクチャー、プランニング、実務家からのコンサルティング、プレゼンテーションなどが組み込まれている。
IBC2026はいつ?
2026年8月19日から25日まで。
東京都の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催予定。
どんな大学の学生が参加する?
日本の大学生に加え、
中国では北京大学・清華大学、
韓国ではソウル大学など、
各国のトップレベルの大学から学生が参加してきた。
OVAL JAPANのスタッフも東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学など、さまざまな大学から集まっている。
TIBCとは?
Tokyo International Business Contest。
主に日本国内の大学生を対象に、
英語でビジネスプラン作成とプレゼンに挑戦するプログラム。
SEPとは?
Staff Exchange Program。
日本、中国、韓国のOVALスタッフが集まり、
IBCの準備、文化交流、組織運営、ビジネスコンテストなどに取り組むスタッフ向け国際交流プログラム。
支援について
OVAL JAPANは現在、
IBC2026を含む活動を継続するため、
クラウドファンディングや協賛企業・団体からの支援を募集している。
学生の国際的な挑戦や、
東アジアの次世代リーダー育成に関心のある企業・団体は、
OVAL JAPANの公式情報から詳細を確認できる。
団体:学生団体OVAL JAPAN
公式HP:OVAL JAPAN公式サイト
公式Instagram:OVAL JAPAN
公式X:OVAL JAPAN
問い合わせ:ovaljapan.gakusei@gmail.com


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